マイホームを購入する場合、住宅ローンを組んで購入される人が多いのではないでしょうか?
住宅ローンを利用してマイホームを購入する場合、住宅ローン控除制度を利用することができます。
住宅ローン残高の一定割合を所得税から控除できる制度です。
マイホーム購入者の金利負担や税額負担を少しでも緩和するために設立されました。
この内容が大幅に改正され、2022年以降、新たな条件でスタートすることが決定しました。
なぜ大幅に改正されたのか、そしてどのような点が変わったのかが気になるポイントです。
この記事では改正点や注意点などについて詳しく解説します。
住宅ローン控除が改正された なぜ改正されたのか?
大幅改正された大きな理由として挙げられるのが、住宅ローン金利が控除率より低い逆ザヤ状態が続いていた点です。
1990年初頭のバブル崩壊を機に貸出金利は徐々に下落の一方となり、過去最低の金利を記録し続けているため、控除率の方が高いといった逆ザヤ状態が長期間続いています。
逆ザヤ状態とは住宅ローンで支払う利息よりも、還付される所得税の方が高い状態のことです。
そのため正常な状態に戻すことを目的として、2022年より新たな条件のもと、この制度が運用されることになります。
逆ザヤ状態の正常化に向けた改正といえるでしょう。
住宅ローン控除の大幅改正により変更になるものは何?
大幅改正により、大きく異なるものとして挙げられるのは以下の要件です。
- 控除制度の期間延長
- 控除率の引き下げ
- 控除期間の延長
- 借入限度額の引き下げ
- 所得要件の引き下げ
- 床面積の緩和
- 中古住宅における築年数の緩和
などが挙げられます。
多くの要件が変更になりました。
もし制度変更がされたことを理解せずに申請をしてしまうと、想定していた還付金額ではなかったなどといったことにもなりかねません。
ここからは、上記の改正点における改正内容を詳しく解説します。
住宅ローン控除の制度自体が延長された
この制度は、当初の期間として2021年12月末日までに利用可能な制度といった位置づけです。
今回の改正に伴い、新たに期間が延長されました。
延長期間は、2025年12月末日までとなっています。
新たな条件が適用された上で、約4年間の延長となりましたが、2025年以後の動きは未定です。
- 廃止
- 同一条件で延長
- さらに改正された上、延長
上記の3点が想定されますが、どのような動きになるのか気になるところです。
今後の利用状況や、利用者の声、社会的な環境の変化などを見極めながら制度の廃止や維持、若しくは変更となるでしょう。
今後2025年12月31日までに住宅ローンを利用してマイホームを購入し、自己の居住の用に供した場合は、改正後の制度を利用することになります。
控除率の引き下げ
もっとも大きな変更点のひとつが、控除率が引き下げられた点です。
年末時点における住宅ローン残高の1%が所得税から控除されるのが住宅ローン控除の特徴といえます。
今回の改正により1%から0.7%へと引き下げられ、利用者のメリットが少なくなってしまいました。
また、今回の適用期間は2025年12月31日までと前述しましたが、2022年から2025年12月31日までです。
控除率は、家の種類、築年数などに関係なく0.7%となっています。
今回の改正における大きな目的のひとつが控除率と借入金利の逆ザヤ解消ですので、0.7
%への引き下げは仕方がないことかもしれません。
住宅ローン控除の控除期間が変わった
控除が利用できる期間は、基本的に10年間です。
今回の改正において控除期間も改正されました。
基本的には、10年から13年に期間延長されています。
しかし、改正前でも2019年の消費税増税により、消費税の増税以降は控除期間が13年に延長されています。
そのため、今回の改正において13年に延長になったとなってもあまりメリットは感じないかもしれません。
さらに、居住年度によって控除される期間が異なる点や、新築と中古の違いによって控除期間が異なる点について注意が必要です。
年度別や新築・中古の違いによる控除期間の違いを下記にまとめました。
新築の場合
居住年度 |
控除期間 |
2022年・2023年 |
13年 |
2024年・2025年 |
10年 |
中古の場合
居住年 |
控除期間 |
2022年〜2025年 |
10年 |
引用:閣議決定「令和4年度税制改正の大綱」抜粋
住宅ローン控除での借入限度額が変わった
税制改正後の住宅ローン控除において、借入限度額が定められており、限度額以上の住宅ローン部分については適用外となっています。
例えば、限度額が4,000万円の住まいに対し5,000万円の借り入れを行った場合、1,000万円部分は適用外となります。
今までの住宅ローン控除は、借入限度額に定めはありませんでした。
しかし、年間の借入限度額は40万円と定められていますので、4,000万円以上の借り入れは実質、控除の適用外です。
今回の改正では、具体的に借入限度額が設定されました。
しかも、長期優良住宅や低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅または既存住宅など、住宅の要件によって借入限度額は大きく異なります。
引用:国土交通省「令和4年度国土交通省税制改正概要」
この表を見ると、住宅の種類だけではなく取得した年度によっても借入限度額が異なることがわかります。
自分が取得する住宅の種類や取得年月日をしっかりと確認しなければいけません。
所得に関する条件が変わった
所得に関する要件にも変更があります。
以前の条件として、住宅ローン利用者の所得に関する要件がありました。
住宅ローン控除制度は、中小の所得者層に対し住宅ローンにより金利負担の軽減を図り、住宅の取得を促す制度です。
高所得者となると、住宅ローンを利用したとしても住宅ローン金利の負担はそう大きくはないと解釈され、住宅ローン控除の適用から除外されてしまいます。
今までの所得要件は3,000万円以上の所得を得ている場合は控除の対象外です。
2022年の改正後からの所得における条件はさらに厳しくなりました。
2,000万円以上の所得を得ている人は住宅ローン控除を受けることができません。。
今まで以上に中小の所得者層を意識した制度になったといえるでしょう。
床面積の広さに関する条件が変わった
住宅ローン控除には、さまざまな要件がありますが、購入した家の床面積も挙げられます。
今までの住宅ローン控除の要件として50㎡以上の床面積がなければ控除の対象ではありませんでした。
今回の改正により。床面積の広さに関しては要件が緩和されています。
40㎡以上の広さであれば控除の対象です。
50㎡から40㎡に緩和されたことで、単身世帯のマンションなども住宅ローン控除の対象となり、住宅ローン控除の利用者が増加するといえるでしょう。
床面積に関しては、注意が必要です。
住宅ローンの床面積は、内法面積で40㎡以上となっており、壁芯面積で40㎡以上と表示されていても内法面積では40㎡に満たない場合があるのです。
壁芯面積とは壁の中心線から測る広さのことで、内法面積は面する壁の内側から測るものなので、壁芯面積の方が内法面積よりも広くなります。
壁芯面積でぎりぎり40㎡以上だと内法面積では40㎡未満の可能性がありますので注意しておきましょう。
中古住宅における築年数が変わった
中古住宅の購入も住宅ローン控除の対象となります。
改正前の要件は、下記の要件を満たしていると住宅ローン控除の対象でした。
引用:国土交通省「すまい給付金」
簡単にいうと耐震基準を満たす建物であることが証明できると住宅ローン控除の対象となります。
2022年の改正によって築年数の要件が緩和され、1982年以降の建物ならば、住宅ローン控除の対象となりました。
以前には必要であった耐震基準適合証明書などの取得も必要ありません。
これも緩和された要件のひとつです。
2021年以前に住宅ローン控除を利用している人への影響はあるの?
住宅ローン控除の改正点などについて詳しく解説してきました。
今から利用する人に関しては、新たな要件を満たした上で、この制度を利用することになります。
総合的に考えると、どちらかといえば控除のメリットは少なくなったといえるでしょう。
では、すでに住宅ローン控除を利用している人は、改正された後の新たな条件下でこの制度を利用することになるのでしょうか?
すでにこの制度を利用している人は今までと変わらない条件で所得税を控除することが可能です。
新たな条件に変更することがなく今まで通りの内容で利用することができます。
改正により最大の控除額はどう変わったの?
改正前の控除額は、年間最大40万円だと前述しました。
控除期間は10年間でしたので最大の控除額は400万円です。
では改正後の最大控除額は、どう変わったのでしょうか?
今回の改正では一律ではなく、住宅の種類などによって大きく異なります。
年間の最大控除額と控除期間における最大の控除額を表にまとめました。
住宅 |
認定住宅 |
ZEH |
省エネ 基準 |
その他 一般住宅 |
中古 認定住宅 |
中古 一般住宅 |
年間最大控除額 |
35万円 |
31.5万円 |
28万円 |
21万円 |
21万円 |
14万円 |
最大の 控除額 |
455万円 |
409.5万円 |
364万円 |
273万円 |
210万円 |
140万円 |
改正前と比べ、すべての住宅において最大控除額を下回っています。
以前よりも控除額の最大額が少なくなったといえるでしょう。
まとめ
新たに住宅ローン控除が改正され、さまざまな要件の変更点について解説しました。
控除の中身自体は、大きくメリットが少なくなったといえるでしょう。
また、特徴として長期優良認定住宅やZEH住宅などには控除の要件を手厚くすることにより、これらの住宅促進を促していることがわかります。
2025年で一区切りとされていることから、2025年以降この制度は廃止されているかもしれません。
マイホームの購入を住宅ローンで取得しようと考えている人は、是非この記事を参考にして、住宅ローン控除制度を最大限活用しましょう。